課長「今日からこの課に配属になった――」
男(せいぜいこき使ってやっか)ニヤニヤ
同僚(どうやっていじめるかな……)ニヤニヤ
課長「覇権社員君だ」
社員「よろしく」ズゥン…
男&同僚「!?」
男(なんだ、この巨漢は……!? なんという威圧感……!)
同僚(派遣じゃなく……“覇権”だとォ……!?)
引用元: ・男「派遣社員が入ってくるんだってよ」同僚「せいぜいいじめてやっかw」
終盤の社員全員参加の送別会はずるいわ
社員「ご指導、ご鞭撻のほどを」ゴゴゴゴゴ…
男「……」ガクガクガク
同僚「……」ガタガタガタ
男(なんてオーラだ……)
同僚(思わずひれ伏したくなる……)
男(――けど、ひれ伏してたまるもんかァ!!!)グッ
同僚(いじめてやる、徹底的にいびってやるゥ!!!)グッ
男「おい、覇権!」
社員「はい」
男「これコピー取ってこいや」
社員「数は」
男「100部だ。これぐらいできるだろ?」
社員「了解した」
男(重要な仕事は回さず、雑用ばかりやらせてやる……)
社員「……」カリカリカリ
男「おいおい……手書きでなにやって――」
社員「……」カリカリカリカリ
男(は、速いッ! 手書きで……コピー機以上のスピード・正確さでコピーを!?)
社員「100部出来上がりました」バッ
男「あ、ありがとう……」
同僚(やるじゃねえか……だったらこれはどうだ!?)
同僚「覇権、これ全部シュレッダーにかけてくれ」
ドサッ…
社員「分かりました」
同僚「きっちり裁断するんだぞ」
社員「御意」
同僚(ウチの会社のシュレッダーはボロイからな……時間かかるはず……)
社員「むんっ!」
バサバサァッ
同僚「おい、なにやってんだ!? 書類をばら撒くなんて――」
社員「秘奥義・手裂打」
シュババババババババババッ!
スパパパパパパパパパパパッ!
社員「完了」ババッ
同僚「手刀で……バラバラに……!」
男「おーい、覇権!」
同僚「お茶入れろや、お茶!」
社員「御意」
社員「この冷たい水に、茶葉を入れ――」パッパッ
男「へ……?」
社員「……」チャプ…
男「手を入れた!?」
同僚「おいおい、きたねえな!」
グツグツ… ボコボコ…
男「!?」
同僚「覇権社員が体温を高めることで、沸騰していく……!」
社員「どうぞ」
男「い、いただきます……」
同僚「いい匂いだ……」
男「……」ゴクッ
同僚「……」グビッ
男「う……美味い!!!」
同僚「体じゅうに活力が溢れてくるゥ!!!」
キーンコーン…
男「お、昼だ」
同僚「社食行こうぜ!」
男「おい覇権、いっとくがここの社食は正社員以外は使用禁止だからな!」
男「自分のメシは自分で用意しろよ!」
社員「御意」
同僚「そんな規則あったっけ?」ヒソヒソ
男「ないけど……いいんだよ!」
男「いただきまーす!」
同僚「ここの定食はうめーな!」
男「……ん?」
ズラッ…
社員「頂こう」
男「な、なんだ……あの豪勢な食事は!? 北京ダック、ぶ厚いステーキ、キャビア、ビーフストロガノフ……」
同僚「どこの皇帝だよ……」
社員「材料は自分で揃え、自分で作らせてもらった」
男「~~~~!」
同僚「これぞまさに……“帝食”!」
ワイワイ…
課長「今日は覇権君の歓迎会だ」
男「みんな、ビール飲もうぜ!」
同僚「おう!」
社員「いや……我はビールは……」
男「あ?」
男「おいおい、まさか下戸かぁ~? 酒も飲めねえようじゃ、社会でやっていけねえぞ!」
同僚「そうだそうだ! 一杯ぐらい飲めぇ!」
店員「お待たせしました」
店員「メタノール・特大ジョッキでございます」ドンッ
社員「どうも」
男「!?」
同僚「!?」
社員「我はこれでないと少しも酔えないので」グビグビ
男「ちょっ!」
同僚「んなもん飲んだら……!」
社員「うむ……視力アップ!」パァァァァ…
……
男「取引先へはタクシーで向かう。つーわけでタクシー止めてこいや」
社員「御意」
男(ククク、ここはタクシーを止めにくいスポットなんだよ。せいぜい苦労しやがれ)
運転手「ひいい……! タクシーが動かない……!」
社員「止めました」
ギュルルルル…
男「えええええ!? タクシーを素手で止めたぁぁぁぁ!?」
男(ここの取引先は手強いんだよな……)
男「おい、あまり失礼のないように――」
社員「契約せい」
取引先部長「ははーっ! 契約させて頂きまする!」
男「瞬殺!?」
男「ウ~イ……終電なくなっちゃったな……」
同僚「どうする……?」
社員「では我が、あなたがたを家へ運びましょう」
ガシッ ガシッ
社員「とうっ!!!」
ギュオオオオオッ!
男「新幹線よりずっと速い!」
同僚「まるで……トトロの猫バス……!」
……
男「……」グビグビ
男「くそぉ~!」ダンッ
男「なんなんだ、あの覇権社員は!」
男「いくらいじめてもこたえねえし、成果を上げやがる!」
同僚「ああ……このままじゃ俺らの立場も危うい。すぐ追い抜かれて復讐されるぞ」
男「今日は夜通し、あの野郎を会社から追い出す方法を考えるぞ!」
同僚「おう!」
男「とかやってたら風邪ひいた……。天罰ってやつかぁ……?」
男「うう……熱が38℃もあるぅ……」
男「頭痛い……助けてぇ……」
男(病院行く気力もねえ……俺……このまま死ぬのかな……)
「もしもし……」
男(……ん? 誰……?)
社員「我です」
男「うわああああ!? なんでここに!?」
社員「気が弱まってるのを感じたので、駆けつけた次第」
男「気って……漫画かよ……」
社員「おかゆです。どうぞ」
男「ふん、誰が覇権の作ったもんなんか……」
男(だけど……いい匂いだ……)
男「……」パクッ
男「う、うまい……!」
男(ああ……一口ごとに体の中の風邪が……消し飛んでいく……)
男「ううっ……」
社員「なぜ泣かれる」
男「今まで……すまなかった! いじめたりいびったりして、ごめんなさい!」
社員「?」
男「今こそ認めよう……。お前こそ……いえ、あなたこそ……“覇権社員”だ……!」
社員「ありがたいお言葉」
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